【MKSAP17】Treatment a patient with tuberculosis meningitis
【Item 1 - 問題 - 】
33歳の女性が2ヶ月持続する発熱・無気力・体重減少、及び頭痛を主訴にERに受診した。彼女は4年前インドからアメリカに移住しており、父は20年前結核を患い他界。その他の医学的情報に特記事項はなく、内服薬はない。
・身体所見
BT 38.6℃ BP 114/70 HR 94 RR 18 BMI 20
無気力は認めるが神経学的所見に異常所見はない。
他、眼、心臓、肺を含め身体所見に特記異常は認めない。
・髄液所見
WBC数 275/μL(98% リンパ球優位)
糖 30mg/dL
蛋白 250mg/dL
初圧 15cmH2O
その他一般的な血算・生化学検査は正常。髄液の抗酸菌染色は陰性であったがMycobacterium tuberculosisのPCRが陽性であった。
頭部CTで脳底部髄膜造影効果を認めたが、midline-shiftや結節陰影、水頭症を示唆する所見は認めなかった。
【問題】
4種類の抗結核薬を開始する事に加え、追加の治療として最も適切なものはなにか?
A.アセタゾラミド(ダイアモックス)
B.デキサメタゾン
C.フロセミド
D.VP シャント
【解答】B.デキサメタゾン
【解説】
本患者は結核性髄膜炎であり、抗結核薬のエンピリック療法に加えグルココルチコイドによる治療を受けるべきである。限られたデータにはなるものの予後を改善する事が示されており、成人の結核性髄膜炎には、デキサメタゾンによる治療が推奨されている。
デキサメタゾンの推奨量はまず12mg/日を3週間投与、その後3週間毎に徐々にテーパリングしていく。デキサメタゾンの代わりにプレドニゾロンを使用している専門家もいれば、より長い投与期間(約8週間)を推奨している専門家もいている。
肺外結核の治療期間は肺結核と同じく6-9ヶ月とするのが一般的である。ところが、結核性髄膜炎の推奨治療期間はより長い事が多く(9-12ヶ月)治療の反応性や薬剤感受性などそれぞれの症例によって決められている。
CSFの生成を減少させる利尿剤(ダイアモックスやフロセミドなど)といった薬剤は、水頭症があって不安定の場合、外科的介入に向かうまでの一時的な措置として使用される。しかし、本患者にはその徴候はない。
結核性髄膜炎の患者は、CSFの再吸収障害により水頭症となり事がある。VPシャント
水頭症の管理目的として使用される事があるが、本患者には水頭症所見はない。また水頭症に対しては外科的治療よりもまず、抗結核薬とステロイドを開始して、その後に何度かの腰椎穿刺が試みられる事が先。
【KEY POINT】
結核性髄膜炎の患者には、抗結核薬に加えグルココルチコイドの投与を
【補足メモ】
<画像>
脳底槽と呼ばれる部位で炎症を起こす頻度が高く、MRIでは脳底槽がT1強調像で等信号、T2強調像、FLAIR像で高信号。また、FLAIR像にて脳溝が高信号となる場合も。
造影を行うと、脳底槽やSylvms裂の増強効果が確認できる。
<治療>
デキサメタゾンの投与量
0.3mg/kg/dayの静注から開始し、1週間毎に0.1mg/kg/dayずつ減量
3mg/dayになったら経口に切り替え、以降3週間以上かけて1mgずつ減量